【相撲コラム】2015秋場所を振り返る

なぜか3場所ぶりの総括ですw

【前半戦(中日まで)】

日馬富士が、名古屋場所初日の妙義龍戦で痛めた右肘の回復具合が思わしくなく、休場する中で迎えた初日の結びの一番、白鵬-隠岐の海戦。
今場所も優勝候補の最右翼であり、過去12戦全てで隠岐の海の挑戦を退けてきた白鵬であったが、「らしくない」相撲で隠岐の海に寄り切られ、2場所ぶりの初日黒星。今年の秋場所は波乱の中幕を開けた。
しかし、波乱はそれだけにとどまらなかった…
翌2日目の嘉風との一番でも相手の速攻相撲についていけずに、過去9戦無敗だった嘉風に金星を献上。白鵬にとっては小結だった2005年九州場所以来、横綱昇進後では初めての初日連敗となった。
そして翌3日目の朝、白鵬は左膝の違和感を訴え、左大腿四頭筋腱炎により大関時代の2006年九州場所(全休)以来、横綱昇進後では初の休場。史上1位だった横綱連続出場(722回)、昭和以降1位だった幕内連続勝ち越し、連続二桁勝利(共に51場所)といった記録は全てストップとなった。
日馬富士、白鵬の休場により「一人横綱」となった鶴竜だったが、3日目、前日白鵬から金星を奪取した嘉風に敗れ、2個目の金星を献上。
そんな中、大関2場所目にして東の正大関となった照ノ富士は圧倒的な強さを見せつけ、初日から白星を積み重ねていく。
また平幕下位ながら、勢が2日目の誉富士に黒星を喫したものの1敗をキープし続け、鶴竜、稀勢の里と共に全勝の照ノ富士を追いかける展開。更に、白鵬・鶴竜から金星を奪取した嘉風が琴奨菊・豪栄道の2大関からも「銀星」を奪い、更に栃煌山・妙義龍の両関脇にも勝利するなど快進撃をみせて、2横綱不在の国技館を沸かせた。

【後半戦】

一人横綱の責任を一身に背負い、9日目まで1敗をキープしていた鶴竜だったが、10日目の関脇・妙義龍戦。妙義龍に押し出されそうになるも土俵際右足一本凌いで妙義龍を叩いて逆転勝ち…と思われたが、鶴竜の踵が先に土俵を割っており、行司軍配差し違えで2敗目を喫すると、焦りが出たのか翌11日目の栃煌山戦で注文相撲をとってしまい、ファンを落胆させてしまう。
また初優勝を目指す稀勢の里は9日目で隠岐の海に敗れ痛恨の2敗目。翌10日目も琴奨菊にいいところなく敗れ、優勝戦線から後退していく。12日目には平幕でただ一人1敗で照ノ富士を追っていた勢も嘉風に敗れ2敗目。更にここまでただ一人全勝だった照ノ富士も栃煌山に敗れ、優勝争いは1敗で照ノ富士、2敗で鶴竜・勢、3敗で稀勢の里という展開に。
13日目、照ノ富士は稀勢の里と対戦。逆転優勝のためには1つも負けられない稀勢の里の気迫溢れた相撲の前に敗れた照ノ富士はこの取組で右膝を負傷。診断の結果は右膝の靭帯損傷で全治1か月。出場が危ぶまれる事態となった。
14日目、周囲が休場を勧める中で強行出場した照ノ富士だったが、やはり怪我の影響は大きく、豪栄道に敗れ3敗目。
これにより「暫定トップ」の鶴竜は3敗の稀勢の里と対戦したが、鶴竜は立ち合いで右に変化。しかし立行司・式守伊之助は手つき不十分として再度立ち合い。すると今度は左に変化。2敗をキープすると共に、稀勢の里の優勝の芽を摘み取った鶴竜であったが、2度も変化するという事態に国技館は騒然となり、座布団を投げる不届き者まで出る始末。
一方、上位陣との対戦が組まれた勢は13日目で栃ノ心、14日目で琴奨菊に敗れ、こちらも優勝戦線から脱落。
そして千秋楽ではついに鶴竜-照ノ富士の直接対決。手負いの照ノ富士が気迫で鶴竜を圧倒。ついに12勝3敗で両者が並び優勝決定戦に。決定戦は低く当たった鶴竜が照ノ富士を鮮やかな出し投げで破り、大関だった2013年春場所以来2度目、横綱昇進後では9場所目にして初の賜杯を手にした。

【総括】

日馬富士、更に白鵬までもが休場という「異常事態」の中、一人横綱としての重責を一身に背負いつつ、優勝という形でその重責を全うした鶴竜だが、11日目の栃煌山戦、そして14日目の稀勢の里戦と立ち合い変化をしたことについては批判が集中してしまった。変化の是非については当サイトのポリシー上直接の言及は避けるが、決定戦の際にファンから照ノ富士コールが起こったことを鑑みると、やや後味が悪い印象はぬぐえないと思う。また、逆に敗れた栃煌山や稀勢の里についても、変化に対応が出来なかったという点で大きな課題を残したといってもいいだろう。とにかく鶴竜にとっては、おそらく白鵬と日馬富士が戻ってくるであろう次の九州場所が本当の勝負ではなかろうか。
照ノ富士は前述の通り13日目で右膝を痛めるアクシデントもあり惜しくも優勝はならなかったが、怪我を決して言い訳にはせず、優勝を諦めなかった姿勢は十分にファンの共感を集めただろう。しかし、まだ若いだけに将来のことを考えれば、「休む勇気」も必要だったのではないかという思いもある。幸い怪我が悪化することはなかったようだが、とにかく今は怪我の治療に専念して欲しいと願うばかりだ。
稀勢の里にとっては2横綱不在の今場所は初優勝の大きなチャンスであり、周囲の期待も大きかったはずだが、結局は11勝止まり。立ち合い変化への対応もそうだが、何よりもメンタル面がまだまだなっていないのではないのだろうか。今一度自分を見つめ直す必要があると思う。
後の2大関は明暗が大きく分かれた。先場所千秋楽で辛くもカド番脱出だった琴奨菊は7場所ぶりの2桁勝利となる11勝を挙げ、ご当地場所である次の九州場所に大きくつながるであろう好成績だったが、一方の豪栄道は不振を極め、千秋楽で稀勢の里に敗れ7勝8敗と負け越し。自身2度目のカド番で迎える九州場所へ向けて、心身ともに鍛錬が必要だろう。
また大関獲りへの足掛かりとなるはずであった栃煌山は初日から5連勝と好調に見えたが、その後4連敗するなど結局は8勝7敗と平凡な成績に終わった。膝に不安があるだけに、まずはその不安を解消することに努めるべきだと思う。
一方、先場所自己最高の12勝3敗で4度目の敢闘賞を獲得し、西前頭筆頭まで番付を上げた嘉風が今場所、まさに旋風を巻き起こした。初日こそ稀勢の里に敗れたが、2日目、これまで9度対戦していずれも敗れていた白鵬に対し持ち前の速攻相撲で臨み、10度目の対戦で初勝利を挙げると、翌3日目も鶴竜に勝利して2日連続の金星。更に琴奨菊・豪栄道の2大関、栃煌山・妙義龍の2関脇にも勝利するなど、11勝4敗で2場所連続の2桁勝利となり、いずれも自身初となる殊勲賞と技能賞を獲得した。特に技能賞は2014年秋場所で安美錦が受賞して以降「該当者なし」が続いていた中で、ちょうど1年ぶりの受賞者となった。来場所は三役復帰は確実的で、33歳とベテランの域にありながらも進化を続ける嘉風の今後が楽しみだ。
また平幕下位ながら終盤まで優勝争いを繰り広げた勢、右膝靭帯断裂の大怪我により幕下55枚目まで番付を落としながらも小結復帰を果たし、自身初となる小結での勝ち越しとなる10勝5敗の成績を挙げた栃ノ心にも敢闘賞が贈られた(栃ノ心は5度目、勢は3度目)。いずれも今場所の成績を来場所につなげていけるように努力を重ねて欲しい。
遠藤は大阪場所で負傷した左膝に未だ不安を抱える状態だったが、千秋楽で2場所連続の勝ち越し。怪我さえなければもっと上の番付でも十分渡り合える力はあるのだから、まずは左膝のケアが大切だろう。
一方十両では大阪場所で遠藤に怪我を負わせて以来十両に下がってからも低迷していた松鳳山、今場所28場所ぶりに幕内から陥落した豊響、十両2場所目にして2場所連続優勝と新入幕を狙う御嶽海、新十両の正代、十両20場所目となる明瀬山の5人により優勝争いが繰り広げられ、最終的に松鳳山が13勝2敗で十両優勝を果たした。また御嶽海は12勝3敗で2場所連続十両優勝こそならなかったものの、初土俵から5場所目での新入幕が確実となった。豊響は終盤失速する形となったが、10勝5敗で1場所での返り入幕は確実だ。正代は新十両の場所を11勝4敗の好成績で終え、来場所は入幕を狙える位置まで番付を上げることだろう。
また幕下上位では西幕下筆頭の朝弁慶が6勝1敗。6勝1敗の力士8人による優勝決定戦の初戦で千代翔馬(優勝)に敗れ優勝を逃すも、来場所の新十両は確実。西幕下5枚目で5勝2敗の安彦も新十両が濃厚となっている。

次回の九州場所は11月8日初日。果たして来場所はどんなドラマが見られるか…

ranking2
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

kanren