関取(十両以上)と幕下以下(力士養成員)の待遇面には大きな違いがあります。
それだけにすべての力士が関取の地位を目指し、関取となった者はその地位を守るべく努力する理由がここにあるわけです。
【収入】
《給料》
- 関取はその地位に応じて月給や褒賞金(給金)が支払われる(十両でも月100万以上)。
- 幕下以下には給料は支払われず、場所手当(1場所ごとに7万円~15万円)と成績に応じた奨励金、師匠からのお小遣いがもらえるのみ(師匠に支払われる力士養成費(1人月額70000円)などから捻出)。
関取の付け人になっている場合は関取からもお小遣いがもらえる場合もある。
もっとも、食費や住居費はかからない上、私生活にも制約があるため、贅沢をしなければ生活には困ることはない。
《退職金》
- 十両以上の力士が引退した場合、地位や勤続場所数に応じた養老金が支払われる。
- 幕下以下は15場所以上勤続した場合のみ、7万~20万円の餞別が支払われる。
【取組】
- 十両以上は1場所15番。仕切りの時間は十両が3分、幕内以上は4分。塩撒きができ、力水の儀式もある。
- 幕内以上では取組により懸賞が掛けられ、勝った力士がそれを手にすることが出来る。
- 幕下以下は1場所7番(8番の場合もあり)。仕切りの時間は2分。塩撒きや力水の儀式はない。
(幕下の取組では時間が余っている場合と、十両との取組では塩撒きがある。)
【服装】
《髷》
- 十両以上は取組時は大銀杏を結わなければならない(髪の長さが足りない場合を除く)。
- 幕下以下は取組時は丁髷。ただし十両力士との取組や初切、弓取り式、床山の練習台、引退時の断髪式では大銀杏を結うことが出来る。
- なお、稽古や普段の生活では十両以上でも丁髷である。
《廻し》
- 十両以上は稽古時は白色の木綿廻し、取組時は黒色または紺色(実際は自由)の博多織の「締め込み」を締める。
- 幕下以下は稽古、取組とも黒色の木綿廻し。
- 「さがり」は十両以上は締め込みの共布で作り、布糊で固めるが、幕下以下は綿の紐で、布糊で固めない。
さがりの色は十両以上の場合は締め込みと同色だが、幕下以下のさがりの色は原則自由。
《着物》
- 十両以上は羽織袴(色は自由)。
幕内以上は5月場所から9月場所での場所入りは「染め抜き」(自分の四股名を染め抜いた特注の着流し)を着ることができる(十両は夏でも羽織袴で場所入りする)。 - 幕下以下は着物(浴衣や着流し)。羽織は序二段以上から可。
- 帯は幕下以上は博多帯、三段目以下はレーヨンまたはキュプラ製の帯。
- 外套(コート)、襟巻(マフラー)は三段目以上から着用可。
《履物》
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- 十両以上は雪駄(畳敷)
- 幕下以下は序二段までは下駄または草履、三段目・幕下は雪駄(エナメル)。
因みに栃ノ心は「雪駄は足に合わない」との理由で関取となった現在でも草履を履いているという。
- 足袋は幕下以上から着用でき、幕下は黒色、十両以上は白色。
【生活】
《居室》
- 十両以上は個室が与えられる(基本的に既婚者以外は部屋以外の住居を設けることは出来ないが、部屋施設の事情により独身でもマンションを借りるなどしている場合もある)。
- 幕下以下は大部屋で寝泊まりする。
《雑用(ちゃんこ番を含む)》
- 十両以上には幕下以下の力士が付き人として付き、雑用を付け人に任せることが出来る。
- 幕下以下は付け人としてついている関取や親方の世話のほか、部屋の雑用やちゃんこ番を交代で務める。
- ただし有望な若手力士や関取経験のある力士は雑用やちゃんこ番、付け人を免除されることもある。
【支度部屋(控室)関係】
- 座布団は十両以上から利用できる。十両は紫色の共用の座布団、幕内以上は自前の座布団(後援者などから贈られることが多い)が使える。
- 明け荷(化粧廻しや身の回りの品を入れる籠)は十両以上から1個(横綱は3個)持てる。
- 巡業では大関以上の場合専用の支度部屋が用意される場合もある。
【移動】
《普段の移動》
- 十両以上はタクシーを利用。幕内以上は運転手付きの車も利用できる。大関以上は国技館の駐車場に車を停めることも可。ただし車の運転は現役期間中は禁止。
- 幕下以下は基本的に電車などの公共交通機関を利用(関取の付け人として行動する場合を除く)。
場所中の部屋と国技館(または地方場所会場)の間の往復交通費は協会より支給される。
《地方場所および巡業の移動》
- 飛行機は十両以上はビジネスクラス(大関以上はファーストクラス)、幕下以下はエコノミークラス。
- 新幹線は大関以上はグリーン車、関脇以下は普通車。
【その他】
《サイン》
- サインは十両以上から可。
- 幕下以下でも初切や弓取り式を行う力士はサインが可能の場合もある。
《結婚》
- 十両以上にならなければ基本的に結婚は認められない。もっとも幕下以下の収入では家族を養うことは難しい。
- 結婚している関取が幕下に陥落した場合は別居させられる場合もある(実際は滅多にないが)。
因みに27歳・既婚で入門した元小結・智ノ花(現・玉垣親方)も、十両昇進までは妻子と別居していた。
《テレビ中継》
- 十両後半及び幕内以上の取組は地上波で放送(国会中継などにより幕内前半までは地上波で放送されない場合もある)。
- 十両前半および幕下の取組はBSで放送。
- 三段目以下のテレビ中継はないが、AbemaTVのSPORTSチャンネルで視聴が可能(無料)。
《その他》
- 外国人力士の場合、幕下以下は場内アナウンスでの出身地は国名のみ。
- 部屋によっては、上記とは違った決まりを設けている場合もある。